法圓寺

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第345回

令和6年4月18日

二重戸籍の人

元気過ぎて困ります

 だいぶ以前のことになりますが、ドラッグストアーでレジの方とお客様の女性が立ち話を始めたことがあります。「久しぶりにお会いしましたが、お元気でしたか?」とレジの方がお客様に声を掛けました。お客様の女性は「お陰様で健康に恵まれて、神様仏様に感謝しております」と答えました。レジの方は、どう返してみようもなかったのか、「では、お舅(しゅうと)さんは元気ですか?」と少し話題を変えました。すると、お客様の女性はがらりと態度が変わり、「ああ、あれか。あれは元気過ぎて困ります」と答えておられました。自分の健康は神仏に感謝できるのですが、お舅(しゅうと)さんという少し気を使う方の健康は、同じ健康であっても、元気過ぎて「困る」になるのです。  私も父が健在の時は、父のこと尋ねられると「元気過ぎて困ります」とよく答えていたような気がします。自分の健康は感謝できるけれど、同じ健康であっても自分にとって都合の悪い人の健康は困りものなのです。それが私たちの自我の姿ではないでしょうか?

二重国籍の人

 そのように、仏さまの教えを自分の本当の姿を教えてくれる鏡としていただいていけるようになることが実は信心を得るということなのです。  安田理深(やすだりじん)という先生は、信心を得た人を二重戸籍の人と表現されたそうです。二重戸籍とは、身はこの娑婆(しゃば)世界にあるけれども、心はお浄土にあるということです。娑婆(しゃば)で自分の都合が行き詰まると、心が浄土に飛ぶのです。すると、また「自分が自分が」という心で生きていたことが知らされるます。相手を自分の都合のいいように変えることはできません。お浄土では、相手を自分の都合のいいように変えようとする傲慢さが知らされて、逆に自分の方が変わるのです。そこに相手を受け入れて生きて行く道が開かれ、都合の悪いことも拝んでいける世界が生まれてくるのではないでしょうか?

浅田正作『仏様』

 浅田正作さんという念仏者の方が『仏さま』という詩を作られています。

なにもかも これでよかった 行き詰まりも 不平不満も 私の目を 開かせてくださる 仏さま

 心がお浄土に飛べば、都合の悪いご縁も仏さまの導きだと拝んでいけるようになるのです。  思い通りにならない相手に、自分の本当の姿を教えられ、ともに仏さまの方を向いて歩んでゆく。それが二重戸籍の人なのです。そのような生き方をさせてもらいたいものです。   

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