法圓寺

お電話にて法話がお聞きいただけます。すべて機械が対応いたしますので、早朝、深夜いつでも下記の番号にダイヤルしてください。ここでは、これまでにお届けした法話の内容を文章にてご紹介します。

0256-94-5692

第267回

平成29年11月1日

耳四郎伝説

耳四郎と法然上人

 昔、摂津国(大阪府)の幣島に耳四郎という大強盗がいました。耳四郎は放火・殺人・強盗をして日々を送っていました。ありとあらゆる悪事を重ね、ついには京都へ流れ込み、姉小路の白河御殿の縁の下に隠れて、盗みをしようと夜の更けるのを待っておりました。ところが、その夜は白河御殿で法然上人のご法座が開かれるとあって、大勢の僧俗の方々が集まっていました。法然上人は、凡夫の罪の重いことを話し、そんな私たち凡夫を、み仏様は真っ先に助けずにおれんと願っておられることを話ました。ご法話を聴聞していた方々は、涙ながらに仏恩のありがたさに念仏を称えていました。耳四郎は、縁の下で聞くともなしに上人の懇ろなご法話を聞いているうちに、自分の醜い心に気づき、こんな自分でもみ仏様は救ってくださるのかと驚いたのです。ご法話は夜の白々明ける頃、終わりました。そして、耳四郎は縁の下よりはい出て上人の御前に参り、自分は悪人であることを告白して、こんな自分でも救われる道を法然上人に求めたのでした。
 「今お話を聞いておると、どんな者でも助かるということであるが、この俺でも助かるのか?」と。それに対して、法然上人は「必ず助かります」とお答えになりました。しかし、そんな簡単な答えでは、耳四郎はさすがに納得できません。重ねて「どうして俺のような悪人が助かるのか?」と上人に詰め寄りました。法然上人は静かに耳四郎の方に向き直り、「耳四郎殿、よくお聞きなされ。この法然が助かるのですよ。こんな私のようなものでも助かるのだから、そなたの助からぬはずがない。悪人こそ真っ先に救いたいというのが、阿弥陀様のご本願なのですよ」とお答えになられました。それを聞いて、耳四郎は涙とともに合掌してお念仏を称えたそうです。そしてその後、耳四郎は髪を切り、法然上人のお弟子に加えていただきました。そんな伝説が伝えられています。

悪人正機(あくにんしょうき)

 浄土真宗は悪人正機の教えであると言われます。悪人正機とは、自分のことを悪人と自覚し懺悔した人を、正しい目当てとして必ず救いとげるということです。この耳四郎伝説は、そのことをよく表現していると思います。現代人は、むしろ自分を善人であると思っている方が多いのではないでしょうか?悪人とは、法律的に罪を犯した人というよりは、自分は間違っていない、悪いのは周りの人の方だと考えている人のことなのです。そう考えてみると、自分の悪人性に頷ける方も多いのではないでしょうか?実は、そういう私たちのための教えが浄土真宗なのです。

過去の法話