第394回
パリオリンピック閉幕
先日、パリオリンピックが無事閉幕しました。日本選手団も大活躍し、海外でのオリンピックとしては過去最大となる20個の金メダルを始め、総数45個のメダルを獲得しました。私も日本選手団からは、たくさんの元気をいただきました。選手や関係者の皆様、本当にお疲れ様でした。
ビーチバレーでの口論
さて、今回のパリオリンピックで私が一番感銘を受けた事は、「ジョン・レノンが争いを止めた」というネットニュースの記事の内容でした。ビーチバレー女子の決勝・ブラジル対カナダ戦で、その事件は起きました。両国の選手が、あるプレーをきっかけに口論を始めました。審判が選手をなだめたり、笛を吹いたりしますが、口論はおさまりませんでした。結局、両チームにイエローカードが出され、会場内には不穏な空気が流れたといいます。
『イマジン』の合唱
その時にDJが、ジョン・レノンさんの名曲『イマジン』を会場に流しました。この曲は人類の愛と平和を願った歌です。会場の空気が変わり、あちこちから『イマジン』を合唱する声が聞こえ始めました。これを聞いて、両チームの選手の顔も怒りから笑顔に変わり、会場は平静を取り戻し、試合が再開されたのです。私はそれを聞いて、改めてオリンピックの精神に触れ、大きな感銘を受けたことでした。
「私たちの人生の争いは いつも善と善との争いだ」
今年8月の真宗教団連合のカレンダーの法語は
私たちの人生の争いは いつも善と善との争いだ
という宮城顗(みやぎしずか)先生のお言葉です。確かに私たちの争いは、いつも自分に正義があり、相手が間違っているという所から始まるのではないでしょうか。自分が正しいと思っているうちは、争いは終わりません。自分が正義だと思っていたのは、結局は自分の都合でしかなく、相手にも同様な正義がある。そのように冷静になって考えていく所に、初めて争いが終わるのでしょう。今回は、その冷静になるきっかけを与えてくれたのが、ジョン・レノンの『イマジン』だったのです。
「和とは不和の悲しみなり」
曽我量深(そがりょうじん)先生のお言葉に
和とは不和なり 不和の悲しみなり
というものがあります。本当の和とは、争いがないということではなくて、不和を悲しむ心の中にあるのだという意味だと思います。和を願いつつ、結局は自分の都合を第一に生きている。そういう自分に目覚め、そういう自分を悲しむことだけが、永遠に和を求めさせていくのだということなのでしょう。
人間は自分の都合を正義だとして争うけれど、その自分の姿に目覚めれば、争いを越えて共に生きていくことができる。そのことをオリンピックでのビーチバレーでの出来事は、名曲『イマジン』の響きをもって私たちに教えてくれたのです。