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法圓寺テレホン法話 第277回(平成30年8月作成)

「生きている亡者」

原爆投下から73年

 昭和20年(1945)8月6日午前8時15分、広島に原子爆弾が投下されました。この原爆のため9万人から16万6千人の方が四ヶ月以内に亡くなり、56万人が被爆したと言われています。人類の歴史の中でも、大変痛ましく悲しい出来事でした。それから今年で73年が経過したことになります。

「過ちは繰返しませぬから」

 広島の原爆死没者慰霊碑の前面には、「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」という文字が刻まれています。この文章は、自身も被爆者である雑賀忠義(さいか・ただよし)・当時の広島大学教授が撰文、揮毫したものです。そして、その言葉は浜井信三(はまい・しんぞう)・広島市長が述べた「この碑の前にぬかずく1人1人が過失の責任の一端をにない、犠牲者にわび、再び過ちを繰り返さぬように深く心に誓うことのみが、ただ1つの平和への道であり、犠牲者へのこよなき手向けとなる」から撰文したものだそうです。

 しかし、現在の日本や世界の情勢を見てみると、原爆の犠牲者に対して「安らかに眠ってください」とは言えないのではないでしょうか。「戦中と 戦後を生きて 今戦前」という川柳があるそうですが、むしろそう言わなければいけないような状況のように思えます。

「生きている亡者」

 広島で被爆された栗原貞子さんの詩に『ヒロシマ消去法』というものがあります。栗原さんは、非常に激しい言葉で語っています。

 「死者たちよ 安らかに眠らないでください
 石棺を破って たちあがり 飽食の惰眠に忘却する生きている亡者を
はげしくゆすって 呼びさませて下さい」

 この詩を読むと、私たちは「飽食の惰眠に忘却する生きている亡者」になりつつあると思えてきます。栗原さんは、そんな私たちを「はげしくゆすって呼びさませてください」と原爆の犠牲者たちに呼びかけているのです。私たちは時間の経過とともに、どんな事も忘れ無関心になってしまいます。

「無関心が平和の敵」

 ローマ法王フランシスコ師は、一昨年の年頭のメッセージの中で「平和の敵は戦争だけではない。自分のことしか考えず、心を閉ざす無関心が平和の敵」と述べておられます。確かに、戦争を忘れ無関心でいることが、一番戦争を助長してしまっているのかもしれません。仏教は不殺生を宗(むね)とする教えです。もう少し社会情勢や政治に関心を持ち、「過ちは繰返しませぬから」と胸を張って言えるような生き方をしたいものです。

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