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法圓寺テレホン法話 第263回(平成29年7月作成)

「色どり豊かな人生」

 元フリーアナウンサーの小林麻央さんが、6月22日に乳癌のために、お浄土へ還られました。まだ34才の若さでした。心からお悔やみ申し上げます。

 今年の1月4日に収録された最後のインタビューの中で、麻央さんは夫・海老蔵さんのことを訊かれ、次のように答えています。

 「歌舞伎役者として生まれて、歌舞伎役者として生きる孤独を感じます。それは家族の愛では埋められないんです。主人は小さい頃から大きなものを背負わされ、誰とも共有できない悲しさ、孤独、苦しみをたくさん味わってきたんです。病気になって2年経って、人と共有しきれない思いが私にもある。そのことに気づかされたら、主人の孤独を少し理解、想像できるようになったと思います。そして、それは病気をして得たものの一つです」と。

 海老蔵さんは、歌舞伎の名門・市川家の跡継ぎとして生まれ、将来の日本の歌舞伎界を背負っていかなければならないという、重い荷物を背負わされ、しかもそのことを誰とも共有できずに生きてきたのです。そういう意味で、海老蔵さんは孤独な人であると麻央さんはおっしゃっているのです。そして、麻央さん自身も乳癌に罹ってしまい、同じように誰とも共有できない辛さを抱えて生きてきたのだと思います。しかし、そういう境遇になった時に、初めて夫・海老蔵さんの孤独に気づけた。それも癌に罹って得たものの一つであると、おっしゃっています。見事に癌という病を引き受け、「癌になったおかげで…」という世界を見い出していた麻央さんに頭が下がります。

 一方、海老蔵さんは、麻央さんについて次のようにおっしゃっています。 「麻央の信念は『困っている人を助けに行きたい』だった。だから、日本で一番困ったちゃんだった僕を助けに来てくれた。本当に麻央とは以心伝心できてたんです。麻央と共に生きたかった」と。麻央さんが、海老蔵さんの孤独を理解し、支えていた様子がよくわかります。

 イギリスの公共放送BBC は去年11月、闘病などをつづったブログで多くの人を元気づけたとして、世界の人々に影響を与えた「ことしの女性100人」に、日本人で初めて小林麻央さんを選びました。麻央さんは、そのBBCへの寄稿の中で、次のように書いています。

 「私が今死んだら、人はどう思うでしょうか。『まだ34歳の若さで、可哀想に』、『小さな子供を残して、可哀想に』でしょうか?? 私は、そんなふうには思われたくありません。なぜなら、病気になったことが私の人生を代表する出来事ではないからです。私の人生は、夢を叶え、時に苦しみもがき、愛する人に出会い、2人の宝物を授かり、家族に愛され、愛した、色どり豊かな人生だからです」と。

 これを読むと、麻央さんは可哀想な人ではなかったと心から思います。癌を患いながらも、「癌になったおかげで…」という世界を見い出して、常に前向きに生き、私たちに生きる勇気を与えてくれました。短かったかもしれないけれど、本当に色どり豊かな人生を送られたのだと思います。南無阿弥陀仏。

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